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2006年4月 3日 (月)

遥か彼方で、安らかに。

僕と彼の思い出で、一番印象深いのがこの病院へ行った時だ。他にも色々な思い出が、小さな事ならそれこそいくつかあるのだが、内容を選ぶ事ができないので今は書かない。それでも、色々な呼び方で僕を呼んでいた、あのBig Johnの声だけは今でも覚えている。

「Jon〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」(通常バージョン)
「Jonっ!!!」(短くきって叫ぶ。いたずら心があるときはこっち)
「JonJonJonJonJonJonJonJonJon・・・」(ささやくように繰り返す。これは?)

などなど。実に豊富なバリエーションで呼んでくれたものだ。同僚達の間ではいつもその話で盛り上がっていた。今日も叫んでる声を聞いたよ、お前もか、俺もだよ、などなど。彼はちらっとでも僕の姿が見えようものなら、大声で僕の名前を呼んだ。そのおかげで何度心臓が止まりかけた事か。。。あれから僕は、きっと心臓も強くなったに違いない。

そんな数々の思い出を残しつつ、僕らにもやがて別れの時がやってきた。ボランティア期間が終了し、帰国と相成ったのだ。はっきりいって、帰国などしたくなかった。ずっと残っていたかった。気の良いボランティア仲間、快適なロンドンの生活。自由と可能性が開けていたはずであり、僕にとっては最高に居心地の良かった場所。それが時間というたった一つの要因で離れなければならないなんて・・・。

帰国の前、最後のシフトの時に僕はBig Johnと話をした。ごく短い、それでいて心に残る会話。思いがあふれて自然と無口になってしまったが、彼は最後に念を押した。

「いいかJon、夢、そして心だ。」
「うん、わかったよ。はっきりとした形の夢はまだ無いけど、形になったら絶対それをかなえてみせる。その時がまたあなたに会う時だ。」

こうして僕らは再会を誓い、僕は日本へ帰国した。まさかその会話が最後の会話になるとも知らずに。

一年の時を経て帰国した日本は、どことなく重苦しい雰囲気が漂い人々は憑かれきっていた。こんな状態だったかと、自分の記憶を辿ってみたもののはっきりと思い出す事ができない。日本の社会が病んでいる証拠か、と思いはしたが、僕だってこの社会で生きなければならない。

デジカメの販売員を始めた僕は、段々と日常に溶け込んでいった。そうしているうちに日々の忙しさにまぎれ、僕の夢はより形をあやふやなものへと変えていく。焦りと不安、僕はどうすれば良かったのだろう。

しかしふとしたきっかけで僕はその世界から足を洗い、留学の会社で働く事となった。とてもやりたい、と思って入った会社だった。未来は開けたかに思えた。朝から一生懸命働き、雑用もこなしながら送る日々。そしてそんな日々に徐々に忍び寄ってきた暗い影。上手く回っていたはずの歯車はきしみ悲鳴を上げ始め、そんな時イギリスに残ったコリアンの友人からメールが入った。

Big Johnが息を引き取ったという。突然の訃報だった。あの、大きな声で僕を呼んだ彼は、夢は何だと一生懸命聞いてきたあの彼は・・・。思い出が大きな波となって僕を襲った。早すぎる!まだ、これからだったじゃないか。再会する約束だって果たせていないし、僕の夢を見届けてくれるんじゃなかったのか?!

興奮の波が去った後、僕は静かに考えた。その時壊れかけていた、当時の彼女との関係。僕のその先。どうしてもなじめない会社、その仕事。このままじゃいけない。夢を追う事は、今や彼との最後の約束なのだ。それを果たさずして、何が男か。

数ヶ月後、僕はすべてのしがらみを断ち切ってアメリカへ渡った。エンジニアのトレーニングを受ける為である。ハードではあったが充実した3ヶ月だった。色々な事に気づく事もできた。人生の中でも、最も大きな何かを得るきっかけを作れたと思う。

今、僕には夢がある。きっとあなたに聞かれたら、胸を張って「Yes」と答えるだろう。ねぇBig John、見えているかな?遠く離れた極東の地で、僕はあなたとの約束を忘れちゃいない。心を大切に、夢を追って生きているよ。喜んでくれているかな?

あなたからもらったもの、あなたが教えてくれたもの。僕は自分の子供ができたら(既に名前は決めてあるのだけど)伝えたい。夢、そして心だ、と。その子があなたに似ていたらちょっと困るけど、それでもあなたのように逞しく育って欲しいと思ってしまう。もしレスリングをやりたいと言い出したら、僕はどうするだろう?

人生何が起こるか分からない。僕の未来はまだ分からない。それでも僕は夢と心を大切に、あくまでも僕として生きる。見守っていてくれるよね、いつまでも。

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コメント

いやーーー!!感動した!!ほんとに感動した!!そして、前も言ったけど、Jonは本当にいい文章を書くよ!!そして、BIG JONHばんさーい!!

投稿: シポロ。 | 2006年4月 4日 (火) 02時37分

ありがとね、そう言ってもらえるのはやっぱり嬉しいなぁ。自分が好きな事で褒められるのは嬉しい。謙遜するところかもしれんけど、心根が素直なだけにそのまま受け取っておくよ(笑)ありがとう!

Big Johnよ、永遠なれ。

投稿: Jon | 2006年4月 5日 (水) 03時31分

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