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2006年3月22日 (水)

ぐるめ。

いかに世界が広いといえども、この僕ほどに手触りへのこだわりを持った人間はいないだろう。恐らくWorld Tezawari Association(WTA)ランキングでも間違いなく1位に入るはずだ。僕は手触りの良いものしか愛さない。

子供の頃から、僕が身の回りに置くのは手触りの良いものばかりだった。またちょっと手触りが良くないものであっても、僕の周りに置いておく事によって手触りがよくなるという、リンス人間と呼ばれ始めたのはいつからだったろう。手触り界の神童であった僕について回る伝説の一つである。

また、僕は女の子と服を見に行くのも好きだ。女性服売り場には手触りの良いものが多い。最近ではファーが流行ったりして、手触り第一主義の僕としては嬉しい限りなのだが、手触りが良さそうな外見でいて実はゴワゴワ、なんて言うものも増えてしまった分気をつけないといけない。

良く姉と一緒に服を見たりもしていたのだが、店に入るや否や片っ端から手触りの良さそうなものは手で確かめ、80tzr以上のものに関しては指先から掌へ、そして手の甲へとステップを踏んで味わうのだ。そう、あれは触覚をフルに活用して味わうものである。僕こそは手触りのグルメである。

ここで念の為、tzrについて説明しておこう。tzrとはどのくらい手触りが良いものかを具体的に数字で表す為の単位で、読み方はずばり「てざわり」である。このランク付けは世界でも6人にしかできない。その中の一人が僕である。WTAの会長として、私情は抜きに鑑定するので気になるものがある人はいつでもどうぞ。

ちなみに今まで、僕の中で100tzrを勝ち得たものはたった一つ、いや二つだけだ。まず一つは、姉とパリで見たマックスマーラのコートの襟にあったファーである。あまりにも気持ちが良くて、姉が先に進んでしまうのも気づかず恍惚の表情で触り続けていた。10分後にようやく引きはがされるまで、僕は天国にいたのである。

二つ目は、以前付き合っていた子の家で飼っていたチンチラのポロリ。とってもふわふわで手触りが良く、文句なしに100tzrを与えたのだった。生きているもので高ポイント、しかも最高の100tzrを勝ち得た希有な例である。

ちなみに手触りの感じ方にも作法があるのを知っているだろうか?WTAが2006年1月に発行した「How to "taste" TEZAWARI」を読んでいただければ分かると思うが、特別にこの場でもお教えしよう。

まず指先で触れる。さっと撫でる程度で力を込めてはいけない。そして次、80tzr以上のものであれば掌でそっと撫でさする。あくまでも、軽く優しく。そのパートを経て85tzr以上のものであれば、次は手の甲で優しく円を描く。内から外に向かうのが望ましい。

もし90tzr以上あるようならば、次はそこから上腕全体で撫でさする。自分の産毛と素材が奏でるハーモニー、これはもう至福の時である。そしてもし、それが93tzr以上ならばいよいよ顔の出番である。まず頬を擦り付け、その感触を楽しむ。次に鼻の頭で軽くノックする。素材の声は聞こえただろうか?

ここでノックが帰ってくればもう遠慮はいらない。それこそが95tzr以上の素材、GTM(Greatest Tezawari Material)の証なのだ。敬意を払い、最大限の礼儀をもってそれには接しようではないか。

人間は、手触りを味わうとき最もそれに適した器官を神から授かっている。唇と鼻の間の部分である。ここ以外で95tzr以上の素材を味わえる場所は無い。これを知らない人は哀れである。

少々熱く語り過ぎてしまったか。しかしこれはとても重要な事であり、手触りを味わえなくなった時こそ人間は終わる。最近では手触りの違いが分かる人が減ってきているようで、世界の行く末が心配にもなっているのだが、そんな未来にも一筋の光明はあった。若い才能の台頭である。

僕がアメリカに留学していた頃、ある時ウォルマートへ買い物に出かけた。色々なものが置いてあり、中には手触りが良さそうなもがいくつも置いてある。胸を躍らせて売り場へ向かった僕が目にしたのは、ショッピングカートに乗り込んだ一人の男の子だった。

その子は、お母さんが押すショッピングカートの中から、通り過ぎる手触りが良さそうなものを一生懸命手を伸ばして触っているではないか。しかも、気に入ったものは一生懸命鼻の下で味わおうとしている。ついに、見つけた!

僕は思わず男児のもとへ駆け寄り、母親の目を盗んでこっそり握手を交わした。まだ年端のいかぬ、5歳くらいの男の子。しかしその目には、何かを共有する男の光が宿っていた。

「ここまで、来るんだ。待ってるぞ。」

彼に目で語りかけ、頷き返す男の子を確認した僕の目には、人間はまだ大丈夫という安堵で浮かんできた涙が光っていた。

そう、人間は、まだ大丈夫。
そして、僕の頭も、まだ大丈夫・・・?

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コメント

1に、
求道者(フェチ、マニア等)には、
自分の感覚が一般人の感覚と
どれだけ乖離できているかが、自身の実力を
計る、大きな指針となる。
即ち、一般人に理解されなければされないほど
その道での実力があるという事になるのだ。
2に、
人は、自分の理解を超越した考えや人物に対して
畏れ、拒絶しやすい。
以上の2点を踏まえて君に言葉を贈ります。

この変態野郎が。

投稿: hiRo | 2006年3月24日 (金) 00時11分

いや、これはフェチではない。人類の未来がかかっているんだ!←血走った目で

でもな、手触りは最高だぞ?君もハマるはずだ。今度厳正なる審査で高品質と認められた素材達を君にも紹介しようじゃないか。ようこそ、向こう岸へ。

投稿: Jon | 2006年3月24日 (金) 02時29分

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