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2006年2月26日 (日)

すむさん。

父の話だ。彼はとってもおかしなというか、お茶目な人なのだ。とっても無口で、何を考えているのか分からないところもあるが、大きくなると彼の良さが分かるようになった。

人と、ものすごくずれている。一緒にいて行動していて、とっても楽しいのだ。本人はいたって真面目に、それでいて気楽に生きているのだが。ほのぼのした雰囲気は、きっと彼が持って生まれた天性だろう。僕にもそれは少し受け継がれているようだけど。

そんな彼に育てられた僕は、幼い頃から信じていた常識を見事に覆された瞬間を何度も見てきた。一つ、世の父親は、寝る時にタオルを海賊巻きにして布団に入らない。一つ、世の父親は、冬は寒いからと言って、肌着を脱がずにそのまま湯船に入らない。一つ、世の男性は、最初のデートでポルノ映画を観に行かない。しかもそれがポルノだと気付かないなんて無い。

数々の伝説をすむさんは作ってきたのだが、その中でもトップレベルのものがある。後にスーツ事件と呼ばれるものがそうだ。

21歳の冬、僕は就職をしようと遅い活動を始めた。それまで特に何も決めていなかったのが、免許を取って以来車にハマっていたため、何かメカニック的なものをできるところへ行きたいと考えていた。そして、その時僕は良いものを見つけたのだ。

自宅からほど近いところにある、キャンピングカーの会社。未経験可、とあったので、一も二もなく応募した。当然面接に行く事となり、緊張と期待の入り交じった思いで前日の夜、スーツに袖を通してみた時の事。

まず最初からしておかしかった。どうしても、見つからない。僕のスーツがどこを探しても無いのだ。おや?と思いながら父親のところを見ると、そこで僕のスーツがかかっていた。一安心をして、袖を通した瞬間僕の目に飛び込んできた光景。

袖が七分丈になっている!!慌てて父親に確認したところ、「そういえば、ちょっとスーツに祖で通したら大きかったから、サイズ直しに出したなぁ。お父さんちょっと縮んじゃったみたいだ。」とのお返事。

彼は既に50代も後半、やや痩せ型で170cmほど。僕は178cmで胸板厚い。・・・どんなに時が経てば、そんなに胸周りがぶかぶかに、そして袖口が10cm以上も長くなるというのだ?!あまりの事に呆然とする僕、堪えきれず笑い転げる姉。我が家はその瞬間、精神病院と間違われてもおかしくない状況だったと思う。

時間は既に夜9時、田舎では既に店など閉まっている。スーツなど買いようがないのだ。しかし、そこで強かったのは母だった。近くにあった紳士服の青木に電話をかけ、事情を説明して、というか無理を言って開けてもらったのだ。急いで出かける僕らに、彼はさすがに責任を感じたのだろう、これで買ってこいと10万円を渡してきた。

10万?!おおぅ、瞬時に出てきたこの大金は一体??聞けばこれは彼のへそくりだと言う。きっと内心では動揺していたのだろう、とりあえずあるものを全部渡す!という感じだったのだが、ありがたくそれを受け取りすぐさま店に行ったのだ。青木で10万もするスーツなど買う訳が無い。こうして父にへそくりがあった事は、母にまでバレてしまい、おつりはしっかり回収されてしまった。

僕の父、愛すべきすむさんの話である。今日も家族で食事に行った後、雨が降っていたのでジャケットのジッパーを上げようとしたすむさん。ダブルジッパーのその下の方を持って引き上げたお陰で、首まで上げたのに下は全開。あぁ、癒されるなぁ。

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コメント

企業説明会で周りの人は全員スーツなのに
一人赤いティーシャツにチノパン、ビーサンで
臨んだ君に、しっかりとDNAは受け継がれて
いると思います。
しかし、
「お父さんちょっと縮んじゃったみたいだ」
のセリフ、癒されるね、確かに。

投稿: hi-Low | 2006年3月 1日 (水) 00時54分

誤解があるってば。あの時は、ちょっとお話聞きに行ってみない?とバイト先の店長に誘われたんだって。気軽に行けるからさ、と言われて行ったは良いんだけど・・・。
あの頃はまだ、人を疑う事を知らなかったなぁ(遠い目で)。純白でなくなったのは、ほぼ君の影響です。

投稿: Jon | 2006年3月 2日 (木) 00時10分

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